愛の歌、あるいは僕だけの星
すっと、亜矢子の全身から力が抜けた。表情を見れば、今にも雨が降り出す空のよう。今まで見てきた亜矢子の顔は、どこかあの当たり障りのない笑みを浮かべる藤原と似たものを感じていたのに。
「銀也君は、……私なんか待たないで、とっくに彼の特別を見つけてた」
「……そっか」
「私を裏切った。酷い、酷いよ……、どうして待っててくれなかったんだろう。だから、銀也君を銀也君の特別以上に私に溺れさせたいって……、そう、思って……」
そっとハンカチを亜矢子に渡せば、彼女は驚いたように目元に手をやった。指先についた滴に、目を見開く。大粒の涙が、ぽろぽろと、とめどなくその大きなアーモンド形の瞳からこぼれ落ちていく。
「なんで……、私、レンゲちゃんにこんなこと話してるのかな」
戸惑いを隠せず、ひたすらに涙を落とす亜矢子を見て、安心させるように微笑んだ。亜矢子の表情が、ゆがむ。