愛の歌、あるいは僕だけの星
『というか、私、しばらく実家に帰らせていただきます』
「あっそう、わかった……て、なんでだよ!」
『声でかいから。いいでしょ?別に。てっきり銀也は喜ぶと思ってたんだけど』
耳を塞ぎながら、夏が眉をしかめた。そう言われて、思わずグッと詰まる。視線を泳がせる銀也に、夏は不思議そうに首を傾げた。
「う……、嬉しいに決まってんだろ。当たり前じゃん。こっちは久々の自由満喫するし、気がすむまでいたらいいんじゃねえの?」
はっと、気づいて夏を見ると、まるで鬼のような目で銀也を睨む。
『……そうね』
「え?」
『それもいいかもね。こんな散らかり放題の部屋より居場所はあるし!銀也のお世話もしなくていいし!』
べーっと舌を出す夏に、ぷつりと自分の中で何かが切れる音がする。
「頼んでねーだろ!大体、おまえ、いっつも俺がセロリ嫌いなの知ってて材料に無理矢理入れようとするのやめろよ!健康管理のつもりかもしれないけど、俺からしたらただの嫌がらせだからな!」
『はあ!?銀也があんまりにも野菜を摂取しようとしないから、苦肉の策なのにその言い草!弟子がいっちょまえに文句言うな!』