愛の歌、あるいは僕だけの星
たまに、こういうことがある。
全く知らない女が、自分と関係を持ったとか、デートをしたとか、ありもしないことを言いふらして話のネタにするのだ。どういうつもりなのか、理解したくもないけれど。
別に、好き勝手言われるのは構わないけれど、事実無根で今回のようなことに巻き込まれるのは厄介だ。
「おい、原田に何すんだよ!!」
脇にいたもう一人が、つかみかかろうと飛び出してくる。銀也は、原田というらしい少年の手首を掴んだままひょいとよけ、その勢いのまま鳩尾を狙って膝を入れた。
「……うぁっ!」
衝撃でうずくまった彼は、それでも必死に銀也を殴ろうと必死の形相で睨みつけてくる。何のスピードもない拳は当然、銀也を捕らえることなど出来るわけもなく、そのまま呆気なく遮られて頭上へと捻りあげられた。
「ぎっ、ぐうっ」
苦しげな呻き声を漏らす仲間の姿を見て、最後のひとりはすでに恐怖を湛えながら銀也を見つめる。
「つ……、強え……。誰だよ、最近、藤原が腑抜けだなんて言ったやつ」
呟かれたその言葉に、銀也はぴくりと反応する。