愛の歌、あるいは僕だけの星

「蒼井、怒ってるかな……、まあ、怒ってるよな」

 生真面目な副会長が、ある日突然生徒会長である自分が暴力沙汰で学校を休んだなんて知れば、激怒するに違いないと確信している。
 
 夏が実家へと戻って五日。学校を休み始めて、もう四日目だ。
 いい加減、そろそろ行かなきゃなと思うものの、身体はちっとも言うことを聞かなかった。節々が鈍く痛み、頭痛もする。熱を計ってみようと思ったけれど、この家には体温計がないことに気づいて諦めた。

(……眠れない)

 この五日間、ほとんど睡眠をとれていない。
 "戻って来いよ"あの時のゴッツの言葉だけが、唯一の目印だった。それがなければ、瞳と閉じた瞬間にあっという間に深い暗闇に飲み込まれて、二度と戻ってこられないような、そんな錯覚に陥るのだ。
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