愛の歌、あるいは僕だけの星

 自覚するしかなかった。
 自分は、おかしくなってしまった。変になってしまった。そのことが、泣きたいくらいに怖いのに、側には誰もいなかった。

「いなくて、当たり前なのに」

 全部、銀也が自分で突き放してきたのだ。
 それなのに、今更望んでしまうだなんて。おろかにもほどがある。

 きみに会いたい。
 ゆっくりと立ち上がって、今度はそっとカーテンを引く。

「……夏」

 きみを望んでしまうのは、どうしてなんだろう。

 
 気づかない振りをしていたけれど、本当はとっくに気づいていた。
 自分がおかしくなったのは、夏と出会ってからだということ。そもそも、夏が実家に帰ると言い出した時でさえ、あんなにも苛々としたのだ。

 こんなにも銀也を変えたくせに、置いてけぼりにするとはなんて酷い女なんだろう。今更恐ろしくなって、拒絶しようと頑張ってはみたものの、やはりうまくは行かなかった。

 うまくやろうとすれば、感情が邪魔をした。
 全然、元通りになんて戻れなかった。
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