愛の歌、あるいは僕だけの星
『銀也!!』
どうして彼がここにいるんだろう。そんな思いを胸に、急いで部屋を出て玄関をすり抜ける。
『銀也、銀也!しっかりして……!!』
苦しそうに荒い呼吸をしている。額には、大粒の汗が滲んでいた。夏は急いで玄関へと戻り、そして拳を握りしめながら大きく腕を振り上げた。
ドンッ、ドンドンドンッ!!
玄関のドアを何度も何度もたたく。中には、母親がいた。何とか出てきてもらおうと、もう一度腕を上げたその直後。おそるおそるといった風に、扉があく。
『お母さん、大変なの!銀也が!!』
聞こえないことは分かっていたけれど、懇願せずにはいられなかった。不審な物音に顔を覗かせた母は、玄関先に倒れた銀也を見て慌てて外へと飛び出してきた。
「君、大丈夫!?」
そっと銀也の頬に手のひらを当てる。
「熱いわね……」
結婚するまでは、看護師として働いていた母が、冷静に銀也の状態を確認していく。銀也が握りしめていたスマホを見つけて手に取った。夏、と登録された名前の下に住所が入力されている。