愛の歌、あるいは僕だけの星
『顔は良くても、口は悪いよね』
「うっせえな。黙ってりゃ分かんないからいーんだよ」
『……騙される人間もいるわけだわ』
「勝手に騙される方が悪いんだろ」
銀也は独り言のように呟いて、夏から離れるように適当なクラスメイトのところへと歩いて行ってしまった。
生きていた頃は知らなかった。いい噂も悪い噂も、絶えず銀也にはあったけれど、夏にとっては委員長と生徒会長として接する僅かな時間、いつだって優しかった。
(……はずなんだけどなあ)
銀也を一瞥し、夏はそっと教室を出る。
授業を受ける必要もない。さて、このあとはどうしようか。こんな身になってしまうと、なかなか時間を潰すのも一苦労だ。銀也が家に帰ってくるのは、きっと星がちらつき始めた頃だろう。