愛の歌、あるいは僕だけの星
「んー……」
小さく呻きながら、ぐっと布団の中で体を伸ばした。久しぶりに、ぐっすりと眠ることが出来て、心なしか身体が軽い。
なにやら、下でバタバタと廊下を行き来する音に自然と耳を傾ける。どうしたのだろうと、ぼんやりする頭を振って、階段を降りていく。
すると、現れた銀也の足音に気づいたらしい夏が、両親の寝室からするりと抜けてこちらに向かい手招きした。
『銀也、こっちこっち!早く来て!産まれるの!!』
「へ?何が?」
『だから、鈴(すず)のこども!』
「鈴?……誰?」
寝起きのため、いまいち思考の鈍い頭をひねって考えつつ、とりあえず寝室のドアをノックする。
「銀也君!どうしたの!」
目の前の光景を見て、ああと納得する。にゃあにゃあと、苦しそうな声を上げる三毛猫が手作りのベッドに寝そべっている。お腹が大きい。今のこの瞬間のために、出産準備はあらかじめ整えられていたのだろう。
「……あ、出てきましたよ!」