愛の歌、あるいは僕だけの星
ゆっくりと、鈴という名前らしい猫の側に膝をつく。夏の母は、「あら、大変!」と慌てたように口を閉じる。夏を見れば、とても心配そうに愛猫の出産を見守っていた。
時間が、ゆっくりと過ぎていく。不思議な光景から、目を離すことが出来なかった。リラックスさせるため、ゆっくりと鈴を撫でている。
「すごい……」
思わず、呟いた。
一時間ほどでようやく産まれたのは、うっすらと毛の生えた小さな小さな子猫が四匹。みいみいと必死に声を上げている。鈴は、痛む身体をものともせずに、一生懸命産まれてたての子猫に顔を寄せ、丁寧に丁寧になめていった。
夏の両親は、ふたりしてうっすらと涙していたし、夏はその半透明な手でがんばった鈴の頭を優しく撫でていた。
スッと、鈴が顔を上げた。
「にゃあ」
夏に向かって、一声鳴いた。
まるで、自分の子供を見てくれと言わんばかりだ。
『頑張ったね、鈴。本当に、よく頑張ったね』
夏の言葉に、鈴がごろごろとのどをならす。この猫、もしかして夏のこと見えてるんじゃないかな。母親になった鈴を見て、銀也はそんなことを思った。