愛の歌、あるいは僕だけの星
窓を閉め切っていたアパートは、ドアを開ければむわりとした熱い空気に満ちていた。クーラーを入れて少しずつ冷えていくのに、ほっと息をつく。
久しぶりに帰ってきたというのに、夏は黙ったままだ。どうしたんだろうと、彼女の視線の先を追う。その気配に気づいたのか、夏がじとりと銀也を見上げた。
「あの、夏……さん」
『銀也……、これ、どういうこと?」
般若のような顔で振り返り、おどろどろしい声を上げる。まあ、正直彼女が怒るのも無理はない。約一週間ぶりに帰ってきたと思えば、そこはまるで腐界の森。制服は脱ぎっぱなしだし、カップラーメンは残した汁もそのままに、ピサの斜塔のように不安定に積まれている。台所には洗っていない食器が置かれ、床には食べかけのポテチやチョコレートが散乱しっぱなしだ。
「いや、ちょっと……」
『ちょっと、じゃないでしょうが!何より、これ!!反省文!?銀也、あんた一体何やらかしたのよ!!』
「……いいがかりで因縁つけられて、正当防衛だったんだけど。ちょっとやり過ぎただけだし」
こうなったら開き直るしかないと、胸を張って言う。