愛の歌、あるいは僕だけの星
声を掛けられ振り返れば、そこには夏の親友である神谷レンゲがいた。夏がこの世にとどまる理由を持っていると思われる彼女の存在に、どきりと心臓が鳴る。それは、結局自分勝手な理由で、夏に伝えられずにいた。
「藤原、あなた、二組の原田とその取り巻きを殴ったんだって?」
「なんで知ってんの」
「相変わらず、藤原って変なとこのんきだし、感心ないわよね。藤原が休んでる間、この噂で持ちきりだったのよ?」
「はあ……」
そう返事をしたものの、まるで気にする素振りのない態度に、神谷は呆れたように溜息をついた。
「気をつけた方がいいわよ。原田は、油断ならない奴だから。頭はいいんだけど、基本的なところが自分本位だし、プライドだけはエベレスト。やられっぱなしのままで終わらすとは思えない」
「忠告どーも。神谷さんて、親切だね」
「……おばさん、喜んでたからね。夏に会いに来てくれたって」