愛の歌、あるいは僕だけの星

 だからだろうか。銀也の冷たさは、どこかで夏を安心させた。自分が死んだことに同情はすれど、悲しい顔をすることはない。ここでなら、あんなにも焼け付くような思いはしなくて済むのだ。

 それに何より、あまり酷い扱いをすれば呪われるとでも思っているのか、なんだかんだいいつつ傍にいることを許してくれたのも好都合だ。

(……死んだ人間に生きている人に影響を与える程の力はないのだけれど。暫く黙っておくことにしよう)

 なぜ、銀也にだけ夏の姿が見えるのかは分からない。銀也自身、幽霊を見るのは初めてだと言っていた。

 けれど流石に、こんなにも中途半端な存在でそういつまでもさ迷っていられるはずもない。もう、誰かが自分のことで泣くのを見るのは沢山だ。

 静かに、誰に気づかれることもなく、そっと消えることが出来ればそれでいい。だからそれまでは、どんなに嫌がられたとしても、銀也に部屋を借りつつ、その方法を探すしか術はないのだ。
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