愛の歌、あるいは僕だけの星
『銀也』
呼ばれ慣れたはずの自分の名前。
それを、夏に呼ばれるだけでどうして特別だと感じてしまうのだろう。薄れゆく意識の中で、ふと思う。自覚するのは、酷くおそろしい。失う時のことを考えれば、苦しくて仕方ない。息ができないくらいに。
けれど、そうか。
これが――
夏が教えてくれたことを思い出した。
痛くて、苦しくて、それでもあたたかいもの。
『銀也、遅いよ。何してたの?』
「……ごめん、待った?」
たぶん、夏と待ち合わせ。待たされて、少しご立腹の夏に、手を合わせて謝った。銀也も夏も、誠東の制服を来ている。紺色のスカートが、風に揺られてふわりとなびく。
『行こっか』
夏が、何のてらいもなく手を差し出すから、銀也も迷いなくその手をとった。ああ、空が青い。ひたすらに青空が広がっている。