愛の歌、あるいは僕だけの星
それがとても綺麗なのに、どこか現実味がない。
その手をとった自分を見て、銀也はすぐに気がついた。
そっか、これは夢だ。
夢の中で、夢だと気づいた。だって、如月夏の手をとることは、どんなことがあっても叶わないと知っているから。彼女のあたたかさを、手に掴むことが、この先一生ないっていうことを、理解しているから。
「夏」
『なによ、銀也』
不思議そうな顔をする夏の手を、ぎゅうと握った。夢だから、その温度を感じることは当然出来ないのだけれど、それでもまったく構わなかった。
『はやく行こ』
夢の中の自分は、夏とどんな約束をしたのだろう。
どこへ、向かおうとしているのだろう。いつか、行き着く終着点。それはいったいどこにあるのか。
夏は、夏の心残りを解決するまで。それは、一番最初から決められているはなしだ。彼女が現れた時のことを思い出して、小さく笑う。
最後のことなんて、もう考えたくなかった。
そんなものに行き着くくらいなら、嘘をついてでも遠回りして、必死に足掻いてでも時間を稼ごうとするんだろう。