愛の歌、あるいは僕だけの星
「会長。あなたみたいな人に、そんな顔をさせるなんて、いったいどんな女の子なんでしょうね」
蒼井は、にこりと笑った。自分は、今どんな顔をしているんだろう。銀也は、そっと考える。感情を知って、恋というものに触れた。それがきっと、藤原銀也という人間を変えたのだ。
「叶うといいですね」
心からの蒼井の言葉に、銀也は微笑む。
「叶わないよ」
「……え?」
飲み干して空になったカップを、持って席を立つ。誤魔化しているわけでも、弱気になっているわけでもない。ただ、銀也はきちんと知っている。理解している。
「どうして……」
「いいの、俺は。もうこれで十分だし」
「どうしてですか!?」
いつも冷静な蒼井の声が、わずかに震える。
「蒼井こそどうしたの、らしくない」
「それはこっちのセリフです。会長らしくないじゃないですか。いつものあの自信はどこへいったんですか」