愛の歌、あるいは僕だけの星
『ずいぶん遅かったじゃん』
「ああ、ちょっと蒼井としゃべりこんじゃって……、って夏!? どうしたんだよ」
『銀也の帰りが遅いから、ちょっと散歩のついでに寄ってみただけ! また、倒れてるのかと思ったよ』
散歩のついで、とわざわざ言い訳する夏がおかしくて思わず吹き出す。なによ、と夏がにらみあげてくる。
「別に? 来てくれてありがとう。すごくうれしい」
そう銀也が告げれば、夏はなんとも言えない表情を浮かべたあと、眉間にしわをよせたままふいっとそっぽを向いてしまった。
「今日、晩ご飯どうしよっかな」
『大分暑くなってきたし、そろそろ冷やし中華とかどう?』
「あー、いいかも」
『じゃあ決まり。帰りに、スーパーで買い物して帰ろう」
張り切ってそういった夏は、急かすように先を行く。夕闇が濃くなった街並みを背に、早く早くと銀也を手招きする。不思議な焦燥感が胸に湧く。置いて行かれないように、慌てて夏を追いかけた。