愛の歌、あるいは僕だけの星
職員室を出て、夏が待っている屋上へと向かう。先ほど、ゴッツに叩かれた背中がじんじんと痛い。力加減が調節できない人間ってこれだから嫌なのだ。
鉄扉を押し開ければ、ぶわりと夏の匂いを孕んだ空気が素肌を撫でる。梅雨時だからか、じめじめとしている。ゆっくりと屋上を見渡せば、給水塔の上で寝転ぶ夏の、ぷらぷらと揺れる足だけが見えた。
「夏ー」
声を掛ければ、返事をする代わりになのか、足がとんとんと給水塔をたたく。どうやら登ってこいということらしい。梯子を使って上へとあがれば、夏がゆっくりと上体を起こした。
『おつかれ、銀也。遅かったじゃん。林間学校の予定は無事立てられたの?』
「とりあえずは、企画書纏まったからゴッツに提出してきた。多分七月の最終週になりそうかな」
『じゃあ、テスト勉強と一緒に準備もしなきゃだね』
ポケットに入れていた缶コーヒーのプルタブを開けながら、「準備?なんの?」と首を傾げる。