愛の歌、あるいは僕だけの星
『なんのって!旅行の準備に決まってるじゃん!どうせ銀也のことだから、水着も浮き輪も持ってないんでしょう?』
「いやいや、今回海じゃないから」
興奮する夏を落ち着かせようと、腰を上げた。そのときだった。がちゃり、屋上の扉を誰かが開く音がした。慌てて口を閉じ、身体を伏せる。
『誰かきた』
夏が入り口の方へと首をのばした。小さく眉を寄せる。この場所は、普段カギがかかっているため、生徒はほとんどこない。だからこそ、銀也がこっそりと愛用しているというのに、他人にこの快適な場所へ足を踏み入れられるのは気分が悪かった。
屋上へと現れた人物を確認している夏を見る。誰だろう。その疑問は、一瞬で晴れる。女の子の、大きな声が広い屋上に響きわたったからだ。
「どうしてよ!」
その声は、銀也もよく知る人物の声。
「……神谷レンゲ」