愛の歌、あるいは僕だけの星
『まあまあ、座って座って。今ちょうど、ドラマ始まったとこだから』
足音もなく近づいてきて、銀也のブレザーに手を掛ける。ひやりとした空気が首筋に触れてぞくりとするも、黙ってしたいようにさせてやる。如月は、銀也から脱がせたブレザーを抱え、押し入れに突っ込んであったハンガーを取り出して、カーテンレールへと掛けた。そうして、すんと鼻を鳴らす。
『女の子のにおいがする。さては藤原君、今日はデートだったでしょ。羨ましいぜ、こんちくしょう』
(どこのおやじだっつーの)
茶化しながらつついてくる如月に、銀也は嫌な顔をしながら否定する。
「別にデートじゃないし」
『ええ?そうなの。またこないだの電話の女の子的なことしてるんじゃないでしょうね』
「……どんな言い回しだよ、それ」
如月があからさまに不快だと言わんばかりに眉を寄せるのを見て、まったく面倒だと肩を竦める。こんな調子で、いちいち口出しするつもりなのだろうか。だとしたら、厄介なことこの上ない。