愛の歌、あるいは僕だけの星
「俺には、よくわからない。嫌になったから、別れたじゃないの? 他人に戻りたくて、離れたんだろ」
「会長、俺は……、別れて、それですぐになかったことに出来るような人と、付き合えないです」
きっぱりとそう言い放つ蒼井が、なんだか眩しい。きっと、蒼井にとって神谷レンゲは特別なのだ。いい男だな、蒼井は。そんな風に感じながら、そしてなんて自分とは違う人間なんだろうと思う。銀也の周りには、いつだってたくさんの人がいたけれど、結局は皆同じだと思っていた。誰と付き合っても同じ。別れて、気が向いたらまた別の誰かと付き合えばいい。そんな風に決めつけて。
蒼井も、神谷レンゲも凄い。
こんなにも多くの人間が溢れる中で、特別な人を見つけることが出来るのだから。銀也には、その感情を理解することがこんなに年を重ねるまで出来なかったというのに。
「でも、特別だからって全てがうまくいくわけじゃない」
「どういうこと?」
「……俺、レンゲが今でも好きです。だからこそ、レンゲが後悔するところなんて見たくない」