愛の歌、あるいは僕だけの星
隣に座って、何か言いたげな様子で銀也を見上げる夏は、そのまま小さく頷いた。そして、実は今日これから向かう「白井沢」という避暑地は、去年神谷と蒼井と夏の三人で遊びに来たことがある思い出の場所なのだと話し始めた。蒼井は何も言っていなかったけれど、何か思うところがあったのだろうか。
『林の奥まで水路が繋がっててね、青色がすっごく深くて綺麗な畔を三人で見つけたんだ。銀也にも見せてあげたいな』
嬉しそうに言う夏に、どきどきと心臓がうるさい。曖昧に頷いて、落ち着かせるためにゆっくりと息を吐く。自覚するって恐ろしい。本当に、まるで坂道を転がり落ちるようだ。
夏休みも初めだからか、特に大きな渋滞もなく目的地に到着した。湖畔のすぐ近くにある赤い屋根のペンションに泊まることになっている。オーナーに挨拶を住まし、鍵を手に部屋へと入る。木枠の大きな窓からは、目の前の湖が一望出来て眺めがいい。