愛の歌、あるいは僕だけの星
「会長、この後どうしますか? 夕食の準備までまだ暫く時間ありますけど」
同室となった蒼井が、荷物を整理しながら問いかけた。
「せっかくだから、周りを少し歩いてみるつもりだけど」
「じゃあ、ご一緒してもいいですか?」
もちろんだと頷いて、ポケットにスマホと財布だけをつっこむ。ペンションを出て散道に出れば、周囲に自生する白樺が日の光を浴びてきらきらと揺れる。隙間から漏れる金色がとても綺麗だ。
『気持ちいいなあ』
一緒に歩いていた夏が、しみじみと呟いた。そんな彼女を見て、ふっと銀也の口元に自然と笑みが浮かぶ。
「会長、どうしたんですか? なんだか嬉しそうですね」
「……え、ああ、いや……。予想以上にいいところだったから」
「へえ。会長、意外にこういうところ好きなんですね」