愛の歌、あるいは僕だけの星

 本当はといえば、神谷がくることを知っていた。教室で、最近仲良くなったらしい三原亜矢子が一緒に行こうと神谷にねだっているのを見かけたからだ。何だかんだと面倒見の良い彼女だ。おそらく、断りきれないだろうなあと思っていた。

「蒼井、あんまり無理するなよ。あの日以来、何するにも上の空だし」

「……会長、気づいてたんですね」

 ぱしりと、蒼井の丸まった背を叩いた。
 いきなりの衝撃に、うわっと、少し前につんのめった蒼井が、慌てて手に持った紙コップをおさえる。

「いい機会なんじゃないの? ここなら、時間はいくらでもあるし」

「はい。俺も、そのつもりです。まさか会長に背中押されるなんて思ってませんでしたけど……、でも、ありがとうございます」

 決意を滲ませた蒼井の表情は、どこかさっぱりとしている。きっと今なら言葉は届くだろう。
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