愛の歌、あるいは僕だけの星
「亡くなってるんだよ。三原さんが転校してくる、少し前に」
ふるりと、三原の手が震える。
転校してきた、その日。三原は如月夏の親友である神谷にたずねたのだ。花瓶の置いてある席のこと。親友が交通事故で、神谷は悲しげに目を伏せながらそう言った。
(なぜ、忘れていたんだろう)
三原は自身へ問いかける。その答えは、すぐに出た。それまで、他人のことになんてちっとも関心がなかったのだ。どうでもいいことだと、すぐに記憶から消してしまった。
じわりと、三原の胸にこみあげるもの。あの日、生徒会室で、銀也に対して言い放った言葉への後悔だ。
『なんでよ、夏を抱けばいいじゃない』
思い出して、咄嗟に両手で顔を覆った。
「……三原さん、どうかした?」
「後悔と、自己嫌悪中」
蒼井が、ふうとため息をつく。
「三原さんと会長の間に、何があったかなんて聞かないけど。そっか……、叶わないってそういうことか」
蒼井の声が、静かに闇夜に溶け、しんと沈黙が舞い降りる。それ以上言葉を交わすことなく、ふたりで黙ったまま空を見上げていた。