愛の歌、あるいは僕だけの星

『今クール、土曜はちょっといまいちなんだよね』

 銀也の隣で、夏が呟いた。その時だった。
 ごんごんごん!と、勢いよくドアが叩かれるのに、思わずびくりと身体を揺らす。誰だ?こんな夜に。蒼井が、立ち上がってドアを開ける。

「銀也君!夜遅くごめんね!! あの、レンゲちゃん見なかった!? まだ部屋に戻ってきてなくて。連絡も繋がらないの」

 女子の部屋がある西棟から走ってきたのか、肩で息をしながら言う。蒼井が、隣で顔を強ばらせた。慌てて腕時計を見れば、すでに23時をまわっている。

「バーベキューで一緒にご飯食べて、早めに部屋に戻るって言ってたはずなのに」

 涙目になる三原を落ち着かせて、腰を上げる。

「蒼井、探しに行こう」

「……会長」

「大丈夫、すぐ近くにいるよ。まずは念の為ってこと。亜矢子ちゃんは、部屋で待ってて。もし、神谷さんが戻ってきたら俺のスマホに連絡ちょうだい。三十分しても見つからなかった場合は、先生に伝えて欲しいんだ」

「分かった。ありがとう、銀也君……」

 安心させるように微笑んで、三人で足早に部屋を出た。
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