愛の歌、あるいは僕だけの星


 外灯も殆どない夜の闇は、想像以上に暗かった。部屋にあった備品の懐中電灯であたりを照らす。ペンションの近辺を中心に歩き回ったけれど、やはり姿は見あたらない。途中、女の子たちのグループとすれ違った時にそれとなく聞いてみたものの、やはり神谷の姿は見ていないと言う。

「会長、三原さんから連絡はありましたか?」

「今電話したんだけど、まだ戻ってないって」

「……どこにいったんだろう、レンゲのやつ」

「俺は、もう一度この辺り探してみる。そんな顔してたって見つからないよ、蒼井。ひとまず別れてもう少し探してみよう」

 蒼井と別れ、神谷の名前を呼びながら周囲を探すもやはり見つからなかった。そろそろ、教師に伝えた方がいいかなとそう考えた時だった。

『もしかして、あそこかな……』

 夏が、ぽつりと呟いた。昔、三人で遊びに来た時に見つけたという、行きのバスの中で夏が話していた場所だ。湖の畔を歩き、そのまま水路の続きを辿る。うっそうと茂る木々に視界は暗いけれど、その分月の光が明るいのが助けだ。徐々に暗闇にも目が慣れて、歩む速度もあがる。
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