愛の歌、あるいは僕だけの星
蒼井の腕が、ぎゅうと神谷を抱きしめた。神谷の顔が、くしゃりと歪む。最後の最後まで、互いに好きだとは言わない。抱きしめ返そうと上げられた神谷の腕は、結局それをせずにぎゅうと手のひらだけを握りしめていた。
さわさわと吹き始めた風で、水面が揺れた。
あまりに静かすぎるこの場所で、動くに動けずにいた銀也は、木々のざわめきに合わせてようやく腰をあげる。
『銀也』
夏が呼ぶのに、目を細めた。
「俺がのぞき見していいことじゃなかったな」
うずくまったままの夏にそっと微笑んで、気配を殺したままそっとその場を後にした。