愛の歌、あるいは僕だけの星
「最後まで、教えてくれなかったけど。夏、あんたの視線はいつも、まっすぐに藤原を見つめていたよね」
神谷の言葉が、ゆっくりと、ゆっくりと身体に染み込んでいく。
『そん……、な……』
竦んだまま、言葉を失う夏の横から、神谷が立ち上がる。
「そろそろ行かなきゃ。蒼井も待ってるかな」
ごしごしと涙を拭って、レンゲはその場を後にした。
両手で顔を覆う。まさか、こんな形で知ることになるなんて、思いもよらなかった。先ほどまで、立ちこめていた濃い靄が、静かに薄れ、晴れていくのがわかる。
『銀也……』
想いを寄せていた人の名前を口にする。生まれた感情は、喜びなどではなかった。
『ごめんなさい』
心の中に押しとどめておくにはあまりにも苦しすぎて、夏はゆっくりと息を吐いた。