愛の歌、あるいは僕だけの星


(消える)

 その言葉が、心に浮かんだ瞬間、銀也は思い切り彼女の名前を叫んでいた。走って、そのまま抱きしめてしまえたらいいのに。

『銀也……』

 振り返った夏の顔を見て、心臓が凍り付いた。ゆっくりと近づいて、夏の正面に立ち視線を重ねる。彼女の両目からは、大粒の涙がとめどなく溢れていた。そっと手で受け止めようとしても、それはするりとすり抜けて落ちてしまう。

「夏、何かあった?なんで泣いて……」

 口を閉ざした夏は、そのまま銀也から視線を外す。こんな夏を見たのは初めてだった。いつだって、彼女は銀也に真正面からぶつかってきた。真っ直ぐに、意思の強い瞳を向けて来たのに。

『……たい……』

「なに?」

『もう嫌だ! もう、消えたいよ!!』

 夏の叫びに、銀也の身体がびくりと揺れる。
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