愛の歌、あるいは僕だけの星

「あ!!」

『油断大敵!まあまあ。あたしがあらすじ説明してあげるからさ』

 にやりと笑って、いそいそとテレビの真ん前を陣取る如月。仕方なく、銀也も横に座る。それに満足した様子の如月が、頼んでもいないのに説明を始めた。内容はとある商社のオフィスを舞台にしたベタな恋愛ドラマだ。仕事の出来る上司と新入社員の超イケメンな後輩から言い寄られる、平凡なOLの話らしい。

『先週ね、ついにこのヒロインが後輩から思いを告げられるところで終わっててさ。凄い気になる場面でしょ』

「……如月はどっちとくっつくと思うわけ?」

『さあ。あたし、このヒロインの幼なじみ役のファンだから。実をいうと脚本よりもそっちが気になる』

 けろりとそんなことを言った。幼なじみ役は、地味っちゃ地味だが演技力はピカイチで、前に別のドラマでもいい味を出していて銀也も好きだった。だから素直に彼女の言葉に頷ける。

「なかなか、見る目あるじゃん」

『伊達にドラマファンは名乗ってませんよ』

 ふふんと得意気に笑う如月を後目に、銀也もドラマに見入る。もう数話放送されているということだけど、ベタなストーリーなだけあって如月の大雑把なあらすじだけで十分追いつくことが出来た。

(……確かに、結構はまるかも)
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