愛の歌、あるいは僕だけの星
不安気な夏に、やわらかな微笑みを浮かべて目を細める。
「信じられなかった、っていう方が当たってる」
そっと、夏との距離を縮めた。ゆっくりと、その半透明な身体をすり抜けてしまわないように夏の腰に手を回す。生きている人間に感じるあたたかさも、柔らかな感触もない。けれど、同じ場所に立っているだけで、こんなにも嬉しいなんて。
「二度も好きになってもらって、信じられないほど俺も馬鹿じゃないよ」
『銀也』
「俺は、夏が好き。なあ、もう一度聞かせて?」
夜も更けて、闇色に染まる空に、きらきらと星が無数に輝いている。湖と空がまるで一体になってしまったみたいだ。ゆらゆらと揺れる黒い水面には、空の星が同じように映っている。
『好き。あたしは銀也が好き。死んでも死にきれないくらい、一度忘れても、もう一度恋しちゃうくらい、大好きです』
夏がぎゅっと銀也に抱きついた。
静かに銀也を見上げた夏に、そっと、触れられないキスをした。