愛の歌、あるいは僕だけの星
思いつつ、しかしこの主人公は気にくわない。仕事で散々世話になった上司に惚れたかと思いきや、後輩の無邪気さにときめいて。あっちにふらふら、こっちにふらふら。恋愛経験が乏しいことを言い訳に、一番タチの悪いタイプだ。
「この女、超ムカつかない?」
『ヒロインがモテるのは鉄則だから、仕方ないじゃん』
「モテるからっていい気になって」
『それ、藤原君自分のことディスってるけど大丈夫?』
ずばっと切り込んでくる如月の言葉の鋭さに、唖然とする。言葉を失った銀也に、してやったりと如月がくつくつと笑う。
『このヒロインはさ、結局このふたりの男のこと両方欲しいんだよ』
「……図々しい」
『まあまあ、ドラマだから。けど、藤原君はさ、こんなヒロインなんかより全然モテるのに誰も選ぼうとしないよね。もっと貪欲になればいいのに……、て、聞いてる?』