愛の歌、あるいは僕だけの星
現実であるということ
そんなこんなで、元同級生の幽霊である如月夏に取り憑かれてから、気づけばもうすぐ半月だ。
最初こそ、いつ呪われるのかとビクビクしながら生活をしていたものの、どうやら如月にはそんな気もなさそうだ。彼女の身体が半透明だということをのぞけば、特に違和感も感じなくなっている自身の順応性に、銀也は少なからず感心していた。
その日の放課後。
校舎五階の角にある生徒会室に、怒鳴り声が響いた。
「会長!またサボって!いい加減真面目に仕事をしたらどうなんですか!?」
青筋を立てながら目を三角にして銀也を睨むのは、生徒会で副会長を務める蒼井静香だった。艶やかな黒髪に精悍な顔立ちをしている、なかなかのイケメンだと銀也は思うのだけれど、いかんせん冗談の一つも言わない。
(……きっと、彼女なんていないんだろうな)
そんなことをこっそりと考えていれば、何かを察したらしい蒼井が「聞いてませんね!」とまた声を上げた。