愛の歌、あるいは僕だけの星
都心まで電車一本で出られる誠東市の中心。閑静な住宅街の端に位置する誠東学園高校は、幼稚舎から大学までエスカレーター式の私立一貫校だ。
とはいえ、銀也を含めた大半が一般受験で入った外部生だからか、ハイソサエティーな空気はあまりない。どちらかといえば、自由な気質で、少しマセている、くらいの感覚だ。歩いて通えるのが銀也にとっては何よりの魅力だった。
低血圧だから、思考もぼんやりとあやふやなまま正門を通って昇降口へと向かい、下駄箱に靴を入れる。それは本当に、一瞬の出来事だった。目の前に影が落ち、なんだろうと顔を上げた瞬間、頬を鋭い痛みが走る。
驚きに目を瞬かせれば、そこには怒りに顔を真っ赤にした女の子が仁王立ちをしていた。見覚えはある。確か、少し前に一度だけセックスをした子だ。けれど朝っぱらから殴られる筋合いはない。
「藤原銀也!あんたって、血の色は青でしょう!!」
「なんだそりゃ。俺は宇宙人か」
「気づいてないみたいだから教えてあげる。あんた、まじでクズだから。人の気持ちをちっとも理解出来ないなんて、人間じゃない。顔だけは綺麗だからもてはやされてるかもしれないけど、そんなんじゃただの欠陥品だよ!」