愛の歌、あるいは僕だけの星
『こら、藤原君!諦めるな!あと少しだろうっ!』
「痛い痛い、千切れる!」
『千切れたくなかったら、さっさとやりな』
「なんて脅し文句だ……、まじで洒落になってない!」
顔に陰をつくって、おどろおどろしく睨みつけてくる如月に脅されるまま、泣く泣くボールペンを握りしめる。また手を動かし始めた銀也を見て、如月は熱血コーチがごとく、よしよしと大きく頷いた。
「如月って、熱血キャラだったんだな。知らなかった」
『ていうか、あたしのこと知ってた?』
「そりゃ、クラスメイトだったし。しかも、クラス委員だったろ。いくら俺でも知ってるし、馬鹿にすんな」
おかしなことを聞いてくる如月に、銀也は当たり前のことを返した。そんな銀也に如月は「だよね」と楽しそうに笑う。
『でも、それだけだったでしょ?』
「……うっ、」
クラス委員をやっていたクラスメイト。
銀也が知っていた、如月夏という人間のすべて。
また首でも絞められるのかと、おそるおそる如月に視線をやるも、彼女は相変わらずにこにこするばかりだ。