愛の歌、あるいは僕だけの星


 ***

『ふああぁあ~……』

「こら、そこ!あからさまに退屈がるな!」

『だって、退屈であることは純然たる事実だもん』

 壁にかかっている時計を見れば、既に夜の九時をまわっていた。如月はやれやれと肩を竦める。

『あの時、土下座してでも蒼井君を引き留めておけば、こんなことにはならなかったのに……』

「俺に土下座しろってか!?ていうか、こんなん俺ひとりでも楽勝だし」

『ははっ、楽勝て。もう九時過ぎてるんですけど』

「そもそも、お前が話しかけてきたせいでこうなったんだからな!一番初めに言っただろ。学校で俺に話しかけるなって!」

『あたしの所為にする気!?そもそも、藤原君が仕事をため込んだのが悪いんでしょうが』

 ぶつぶつ文句を言いながら、如月がデスクに置いてあったスマホを手に取る。いつ盗み見たのか、あっという間に暗証番号を解除するのにぎょっとする。

「あ、おい!勝手に人のスマホ見んな!」

『べっつに、藤原君のメールとか見ないし、興味ないから。ちょっとネットでも見るだけ……、て、あれ?』

 如月が小さく首を傾げた。
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