愛の歌、あるいは僕だけの星

「なんだよ、どうした」

『あの壁にかかってる時計、狂ってるね。しかも、結構大幅に』

 そういって、ほら、と銀也にスマホの画面を向ける。
 時計を見れば、なんと一時間もずれている。時刻は、十時を表示していた。

『凄いじゃん、藤原君。集中してたから全然気づかなかったんだね!お疲れさま』

「……最悪。見たいテレビあったのに……」

『あ、それなら大丈夫。あたし念の為に録画予約しといたから!』

「おお!如月、いい仕事するじゃん!……、て、ちょっと待て」

 ざっと顔を青くした銀也に、如月がきょとりと首を傾げる。慌てた様子で書架から黒いバインダーを手に取り、ぱらぱらとめくって頁を確認した瞬間、がっくりと頭を下げた。

『え、ど、どうしたの?藤原君』

「……やばい。うちの学校、全校舎の玄関にオートロック機能付いてんだけど、その稼働が夜の十時だった」

『嘘でしょ』

「こんなこと嘘ついてどーすんだよ!」
< 46 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop