愛の歌、あるいは僕だけの星
「なんだよ、どうした」
『あの壁にかかってる時計、狂ってるね。しかも、結構大幅に』
そういって、ほら、と銀也にスマホの画面を向ける。
時計を見れば、なんと一時間もずれている。時刻は、十時を表示していた。
『凄いじゃん、藤原君。集中してたから全然気づかなかったんだね!お疲れさま』
「……最悪。見たいテレビあったのに……」
『あ、それなら大丈夫。あたし念の為に録画予約しといたから!』
「おお!如月、いい仕事するじゃん!……、て、ちょっと待て」
ざっと顔を青くした銀也に、如月がきょとりと首を傾げる。慌てた様子で書架から黒いバインダーを手に取り、ぱらぱらとめくって頁を確認した瞬間、がっくりと頭を下げた。
『え、ど、どうしたの?藤原君』
「……やばい。うちの学校、全校舎の玄関にオートロック機能付いてんだけど、その稼働が夜の十時だった」
『嘘でしょ』
「こんなこと嘘ついてどーすんだよ!」