愛の歌、あるいは僕だけの星
えっへんと、勝ち誇ったように言う如月に、銀也は何も言えなかった。急に何も言い返さなくなった銀也を不審に思ったのか、如月が俯く銀也を真下からのぞき込む。
『ねえ、大丈夫?そんな悔しい?おーい、藤原君!』
ぱたぱたと銀也の目の前で手を振る如月。
もう一度、その手を掴んでやろうと思ったものの、やはりそれをすることは出来なかった。
(俺は……、しっかり認識出来ていなかったんだろうか。それとも)
呆然とする。
そんな、まさかと思った。如月が、すでにこの世に存在するはずじゃないっていうことを。認識出来ていない、というよりは、いつの間にか曖昧になっていたんじゃないか。
腹の底から沸き上がる感情。
それは、いままでに感じたことのない焦燥感。
この気持ちは、一体何なのだろう。如月が死んでいると、思い知らされた時の、この感覚。ゆっくりと浮かんだ答えを慌てて否定する。
如月はいつだって、半透明で。うっかりと大声で彼女に話しかけてしまえば、周囲の人間にもの凄い目で見られることもしょっちゅうだ。こんなにも、人間じゃないという条件が揃っているのに。それとも。