愛の歌、あるいは僕だけの星

「一言文句いってやらないと、気が済まない」

「誰に文句言うんですか?自分が寝坊したことを」

「誰でもいいだろ。こっちの話!」

「……いいですけど。珍しいですね、会長がそんな苛々するなんて。いつも何てことないって顔で飄々としてるくせに」

 蒼井が不思議そうに銀也を見つめる。それにしても最近、独り言多いよな、会長……。そんな風に心配されているとは露にも思わない銀也は、溜息をひとつこぼした。

 午後の授業には出席することにした。
 本当は、さぼってしまってもいいかなと考えもしたけれど、もしかして如月は教室にいるかもしれないと思い立った。そっと中の様子を伺おうとしたところ、目敏い女の子達に囲まれて帰るに帰れなくなってしまったのだ。結局、そこにも如月の姿は見当たらなかった。

(なんなんだよ)

 そうして渋々授業を終え、すっきりしないもやもやしたものを抱えながら足取り重く校門を出た、その時だった。
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