愛の歌、あるいは僕だけの星
「あ、銀也だ」
如月よりもワントーン高い声に、背後から呼び止められた。振り返れば、そこにはどこかで見覚えのある女の子が、満面の笑みで手を振っていた。確か、何度か遊んだことがあったかもしれない。
(たしか隣のクラスで、名前は確か宮崎……、あれ、なんだっけ)
面倒くさいと思いつつも、ここで無視したところで彼女みたいな子にはまったく効果がないことを既に知っていた。
「今日、午前中学校来てなかったでしょう?寝坊でもしたの?」
「……あー、まあ、うん」
「銀也、クラスにいないと目立っちゃうから、大変だね。ねえ、今帰りだよね?この後ヒマ?」
銀也の腕に抱きつきながら、必要以上に身体を密着させようとする彼女に、自然と眉間が寄った。
「宮崎さん、距離近くない?」
「わざとだよ」
小悪魔的に首を少しだけ傾げて、そっと銀也の背筋を爪でなぞる。随分あからさまなお誘いだ。