愛の歌、あるいは僕だけの星
(……面倒な女)
張り付けた笑顔の下で、軽蔑の視線を向ける。けれど、彼女はもしその感情を読みとれたとして、気づかない振りをするんだろう。そういう、見たくないものは見ないでいられる、強かで自分勝手な強さを彼女は持っているのだ。
銀也の背に伸ばしていた手を、ゆっくりと腰に移動させ、なかなか反応を示そうとしない銀也に露骨な催促をする。早くして、これ以上待たせないで。小さく身じろぎをして、柔らかな彼女の身体が押しつけられた。
「ねえ」
「……まあ、いっか」
「やった!銀也と一緒にいられるの、超嬉しい!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶ彼女を前に、ふと脳裏に自分のことを最低野郎だとのたまった如月が過ぎる。
(げ、なんだいまの)
振り切るように、そっと頭を横に振った。
どうにも、憎めない彼女に毒されてしまっているようで恐ろしい。これ以上自分の生活に踏み込まれないよう、気をしっかり持たなければ。