愛の歌、あるいは僕だけの星
「私の家、今夜両親ともいないんだ。ゆっくりしていってね、銀也」
彼女の家は、学校から十五分ほど歩いた場所にあるマンションだった。両親は共働きで、家にはひとりでいることの方が多いという。その隙を狙って、娘が男を連れ込んでいるだなんて、きっと考えもしないのだろうなと銀也は思う。
手を引かれるようにして彼女の部屋に入り、半ば押し倒されるようにベッドへともつれ込んだ。昨夜家に帰れなかったからシャワーを使いたいと言えば、じゃあ一緒に浴びるとついてくる始末だ。
熱目のシャワーにふたりで打たれながら、強請られるままにキスを交わす。重ねられた唇の生ぬるさに、ひそかにぎゅうと瞼をとじる。手のひらに感じる肌の感触。こみあげるような衝動に身を委ねながら、互いに気持ち良いものをむさぼる行為。
銀也の顔を、両手でつつみこみながら、彼女は微笑んだ。それに対して、自分はいったいどんな顔をしているんだろうか。
「銀也、このまま今日はあたしんちに泊まってかない?」
彼女には、はちみつを溶かしたような色をした銀也の瞳いっぱいに自分自身が映ることが、嬉しくて仕方ないのだ。今夜はこのまま、この幸せに浸っていたい。そう思っていたのに。
「……あー、ごめん。俺、この後用事あるから」
視線を逸らすようにして、それだけを言う。
「ええっ!?」