愛の歌、あるいは僕だけの星
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教室、窓際の一番後ろ。その特等席が銀也の席だった。
朝、いつものように教室へと入れば、鈍感な自分でも気づく程には教室の空気がどこかおかしかった。
ホームルーム前、いつもだったらざわざわとうるさいのに、今は誰も口を開かない。嗚咽や、すすり泣くような声が聞こえる。
しばらくして担任が入ってくる。いつもなら、このタイミングで『起立』とクラス委員長のよく通る声が響くはずなのに、今日に限ってはそれすらもなかった。
ちらりと視線をやれば、やはり委員長の席は空いていた。
(……なんだ、委員長は今日、休みか。めずらしい)
ゆっくりと机に顔を埋めようとした、そのときだった。
担任が教室を静かに見渡した後に、わずかに声を震わせていった。
「昨夜、緊急に連絡網が回ったから、既に聞いてはいるだろう。本当に、残念でならない知らせだった。如月夏(きさらぎなつ)が、昨日の夕方に交通事故に遭い亡くなった」