愛の歌、あるいは僕だけの星
如月なんかの為に、どうしてこんなに探し回らなきゃならないんだ。こんなに必死に探さなければならないくらい、彼女の存在を気にしている自分が、銀也には信じられなかった。
ポケットにつっこんでいたチラシを開く。それは近くのミニシアターの広告だった。如月が好きな俳優が出演する映画が単館上映されるとかで、見たい見たいと騒いでいた。
「……この時間じゃ、映画館もやってないしなあ」
後は、如月の実家。一番可能性はあったけれど、さすがにこんな遅い時間に訪ねるわけにもいかない。そこは、明日の朝向かうことにしよう。
意を決したように顔を上げて歩き始める。最後に向かったのは、如月夏が眠る場所。クラスメイトが話しているのを聞いたから、場所だけは知っていた。
町の外れにある如月の墓は、綺麗に掃除されていて新しい花が飾られていた。けれど、やっぱりここにも彼女はいなかった。
「やっぱり、もう、消えちゃったのか」
ぐるりと辺りを見渡す。小高い丘の上に位置するそこからは、誠東の町全体が一望出来る。ポプラや楓なんかの木々が沢山植えられた緑豊かな美しい場所だった。
銀也は、小さく息をついた。近くにあった自販機で、オレンジジュースとコーラを買って、見よう見まねで墓に供えた。