愛の歌、あるいは僕だけの星

 途端、泣き叫ぶような声が上がる。
 如月が、死んだ。担任の言葉を、銀也はすぐに飲み込むことが出来ず、もう一度空席を見て、そして手元にあったスマホを見る。充電が切れていて使い物にならない。家電もなく連絡手段のつかない銀也は、どうやら連絡が届かなかったらしい。

『藤原君、これ。クラス分集計しといたから、宜しくね』

 にこりと笑う如月の顔が、不意に脳裏に浮かぶ。
 言われるがまま、一応この学校で生徒会長をしている銀也とクラス委員長だった如月には、ほんの少しだけ接点もあった。

 とはいっても、仕事上の雑務について話をしたことくらいだから、担任に突然彼女の死を告げられたところで、実感なんて沸くはずもなく。他のクラスメイトのように嘆き悲しむことも出来なかった。

 いつからか、人よりも感情というものに疎くなって、あまり人間というものに興味が持てなくなった。なぜだと聞かれても、思い当たる理由やきっかけなんてもうどうでも良くなってしまった。

 言えることは、彼女がいなくなったって、銀也にとっては何一つ影響がないということだ。

 毎日、おんなじことの繰り返し。退屈で仕方ない。
 自分なんかの何がいいのか、顔も知らない女の子達からはこぞって好きだと告げられて、いつの間にやら幻滅され、悪者にされたと思ったら平手打ちを放ってきたりする。理解出来ない。関わらないでいてくれたら、こっちだって楽でいいのに。けれど、銀也にとってはそれもまた、繰り返されるありふれた日常のひとつでしかないのだ。
< 7 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop