愛の歌、あるいは僕だけの星
そりゃ、寝起きはよくないけども。銀也は、こっそり溜息をついた。
(……そっか、やっぱ家にいたんだ)
如月は、消えたわけではなかった。成仏したわけでもなかった。単なる自分の早とちりで、きちんとこの部屋に帰ってきた。そのことに、不思議と安心した。嬉しいと、感じたのは確かだったのに。けれどそれよりも、安堵と共に心に生まれた苛立ちが、どんどんと膨れ上がっていくのだ。
『あのね、……昨日は』
如月が何か言おうと口を開いたその瞬間、遮るように言った。
「やっと、成仏してくれたと思ったんだけど」
『え?』
「まだいたんだ」
『藤原君……』
はあ、と深く息を吐いて如月を見下ろす。きっと、酷い顔をしていると思う。銀也はぎゅうと拳を握りしめる。そうしないと、体が震えてしまうのだ。如月が、今度こそ戸惑ったように銀也を見上げた。駄目だ、これ以上言ったら。わかっているくせに、止められない。