愛の歌、あるいは僕だけの星
「ほんと、いい加減にしてくれないかな。幽霊のくせに、これ以上俺の生活をかき乱さないでくれる?迷惑なんだよ」
びくりと如月のからだが揺れて、黒目がちな瞳が大きく見開かれた。あ、やばい泣かせる。銀也は咄嗟に思い、こくりと息をのんだ。
『……黙って聞いてれば、さっきから言いたい放題』
「え……」
ふるふると怒りに震える如月が、ゆっくりと顔を上げた。泣くどころか、今にも怒りが爆発寸前だ。
『あたしだって、出かけることくらいあるの!言っておくけど、あたしは自縛霊じゃないんだから!』
「じゃあ、なんで黙って出掛けんだよ!無断外泊なんて、居候のくせにいいご身分じゃねえか!!」
冷静に考える余裕があれば、如月の声が聞こえない近所の住民には銀也がひとり怒鳴るおかしな少年だと思われると考えられるのに、今はそれすらも出来ない。
怒鳴り合いはどんどんエスカレートして、終いには如月のせいなのだろう、パン、パン、とラップ音すら聞こえる始末だ。