愛の歌、あるいは僕だけの星

 銀也の綺麗な顔には、くっきりと濃いくまが浮かんでいる。ほんとに、夜通し探してくれたのだと思うと、申し訳ない気持ちとともにやっぱり嬉しい。ごめんね、藤原君。もう一度、こっそりと心の中で謝った。

 銀也は、特別口数が多い方ではないから、夏が口を開かなければ本当に静かだ。銀也の足音だけが、橙色の外灯に照らされた夜道に響くだけ。

「なあ、昨日はどこ行ってたの?」

 ふと、銀也が話しかけた。

「おまえが、ひとことでも言ってくれさえすれば、こんなに探し回る必要なんてなかったんだぞ」

『あー……』

 思わず夏が口ごもれば、何を考えたのか、銀也がにやりと意味ありげに口角をあげた。

『なあによ、その顔!』

「さては、前に好きだった男ん家でも行ってた?」

『はあ!?ばっかじゃないの!違うし!そんな人いないから』

『そんな全面否定しなくても。別におかしなことじゃないだろ』

 呆れた様子で呟く銀也に、夏は悩みを誤魔化すように頬をかく。そうして、仕方なしに口を開いた。
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