愛の歌、あるいは僕だけの星
『あのね、昨日はね、あたしの四十九日だったんだ』
「え……」
『あたしがさ、ちゃんと天国で幸せになれるように、大好きな人たちがあたしの為に法要をしてくれるの』
思っても見なかったんだろう、銀也が目を見開いて夏を見つめる。そんな彼を前に申し訳なさそうに夏が苦笑する。
『ほら、一応さ、あたしの為にやってくれるんだったら、ちゃんと見ておかなきゃって、思って』
亜麻色の、ビー玉みたいな瞳がゆらりと揺れた。その瞳には、当然、この世界で生を失った夏の姿は映らない。
『ごめんね。何も言わずにいなくなっちゃって。本当は、すぐに帰るつもりだったんだけど、つい長居しちゃった』
「……そうだったのか」
そのまま俯いて、何か考え込むように黙ってしまった銀也に、夏はそっと微笑んだ。
『なに暗い顔してんのよ。らしくないなぁ』
ぱしんと、銀也の背中を叩けば、思いのほか力が強かったようで、衝撃に銀也が顔をしかめた。
「相変わらず、人をどつけるだけの馬鹿力はあるんだな」
『あ、なにそれ。女の子に向かって暴言吐くなんて。天誅!」