この恋は、風邪みたいなものでして。
「少なくても私はね。後ろでしっかり蓋をする感じ。何―? 開けたいの?」
「いえ、あの、昨日、颯真さんの車に落ちてたから気になって。落としたらすぐ気づきそうだなっとか」
「女物のピアス?」
「多分なんですが、女モノかなって。音符にルビーが入ったピアスで」
「えっ」
明らかに動揺した菊池さんが、らしくない大声を上げて回りを見渡す。
自分でも動揺しすぎた自分に驚いている姿が可愛い。
「それって、誰のピアスなんだろう。颯真さんは慌ててたり、挙動不審になったりはなかったの!?」
「いや、普通でした。それ以上に子猫の保護とかに頭がいっぱいだったかもしれないし」
「……そう。じゃあ私の思い違いかな?」
「どうしたんですか?」
菊池さんの行動が怪しすぎて、何か知っているとしか思えない。
「処方箋読んでみて」
「今はその話しではなくて」
「だって、小説中に出てきたの。『甘い旋律を奏でるピアニストの耳に、音符のピアスが揺れている』って」